2021年4月17日
シアタークリエ(東京)
松下洸平 生駒里奈 ファーストサマーウイカ 坪倉由幸(我が家)
野口かおる 森 準人 シルビア・グラブ 岡本健一

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昨年の緊急事態宣言あけくらいに、松下君の演劇観たいわと思ったのに、さっぱりチケットがとれなかったのが、たしか、同じ作家の作品で、今回、まだ先行抽選の時に申し込んだのでした。ケラリーノサンドロヴィッチという日本人の俳優さん兼作家の方の作品で、KERACROSSというプロジェクトがあり、この作家の作品を演出家をかえて第5弾まで上演するらしいです。

これは、長いです。2幕物で、1幕が90分、2幕が70分だったかな。わたしのような小劇場中心の人間にとっては、2本分くらいのボリュームでした。あらすじは、書くのが大変。クライムコメディという類だそうです。登場人物は、俳優さんが6人だったかな?まあ、それなりの人数でした。ルーファスには、嘘つきの姉ドナがいました。ドナは、幼い頃、父親とその愛人を殺したといわれていました。冒頭で、ドナはルーファスにばか正直ではだめだといい、嘘と真実をまぜあわせ人を信じさせ、絶妙のタイミングで裏切るのだ教えます。それから数年後、ルーファスは谷間の家に住んでおり、ドナは亡くなっているようにみえます。ルーファスはドナにそっくりなエレンディラという女と暮らしています。エレンディラは、化粧品会社の女社長のバッグを盗み、ルーファスはそれを知って、その女社長をゆすれるのではと思いつきます。ルーファスの谷間の家は、抵当にはいっておりお金が必要だったのです。そこへ、ドナの元夫で弁護士ハーフムーンとその恋人のガラが、眼科医のモーガンとともにやってきます。ハーフムーンはドナのお墓を作りたいといいますが、何かもくろんでいるように思えます。ルーファスは、彼らを全く歓迎していないのに、さらにドナの大学時代の知人シャンプーもやってきます。シャンプーは、ドナの嘘で人生を狂わされたと思っており、ドナにそっくりなエレンディラに殺意を覚えます。そして、化粧品会社の女社長をゆする電話をかけていたはずだったのに、その本人だと名乗る女性ビビが谷間の屋敷にたずねてきます。実は、ハーフムーン、ガラ、ビビ、エレンディラはぐるで、ルーファスからその屋敷をまきあげようとしていたのでした。人々は嘘の会話を重ねていきます。その間、シャンプーは、崖に落ちたり、犬にかまれたりして重症をおいます。ガラは、ひどい頭痛に悩まされ、眼科医はガラが脳腫瘍ではないかとハーフムーンに告げます。そこへ、銃をもったルドルフという大差が、獰猛な自分の犬を殺すためにやってきます。シャンプーは、この犬にかまれていたのです。眼科医は、屋敷を歩いているときに、穴に落ちてしまい行方不明になります。こうして人々が思いがけない客たちとはちあわせているうちに、いつしか元の目論見どおりにことがすすまなくなっていきます。そして、ナイフをつかったり、銃を使ったりして、人々がどんどん命をおとしていきます。ルドルフは、実は、刑事で、少し前に自殺未遂で保護された女性があちこちで毒殺の殺人をくりかえすのを追ってきていたのでした。眼科医は、穴の中で、死体と骨をみつけます。エレンディラは自分に弟がいた話をします。どういういきさつか忘れましたけど、ここでドナは、実は愛人と父を殺したのではなく、母親が小さな娘に罪をかぶせたことが発覚します。そして、エレンディラの弟は母親を殺したではないかというほのめかしがあります。エレンディラは実は、ドナで、エレンディラは穴の中の死体ではないかと。あらすじ、わかりにくいですね。けっこう、間をはしょっているせいもあるかと思います。物語の中心は、嘘ですから、人々が語ることがどれもこれも真実なのか、嘘なのかわかりにくくて、どれも伏線みたいだし、重要そうだけど、そうでもなかったりと、まあ、観終わってもよくわからないところがいっぱいなのでした。

長いわりには、つまんなさは皆無でした。観ている時は、おもしろく観れていたと思います。演出の妙でしょう。あと、俳優さんたちもお見事でした。こういう作品は、やりがいがあるのでしょう。意味があるのかないのかわかりませんけど、ディテールは、よくできていると思いました。退屈させないで、次々とみせてくるある意味エンターテイメントな部分は十分かと思います。この作家の方、賞もたくさんとっているし、お客さんがはいる作品を作る人なのでしょう。

しかしながら、わたしは、本日の観劇に関しては、深く後悔しました。なんというか、観終わって、ものすご~く後味が悪いです。今、心が弱っているからかもしれませんけど、観なきゃよかったと思いました。人間って、こういう側面もあるのかもしれませんけど、人の心の闇の部分というか、醜い部分をわざとみせて、そのまま救いなく終わっているように思えました。人間のある部分を描くという試みなのかもしれないけど、この作品を作る意味というか、作りたい気持って、どういうものなのでしょう。映画”パラサイト”を観た時も、後半以降の展開に、ものすご~く気持ちの悪い思いが残った時に似ています。わざわざ劇場にいって、こういう気持ちの悪さをかかえて帰ることになろうとは思いもしませんでした。つまんなくないけど、嫌悪感のある作品、初めての体験でした。まさか、松下君の出演する作品でこんな気持ちになるとは思ってもみませんでした。これまで、彼の出演した作品は、つまんないと思った作品はあったけど、たいていは、心に響く作品が多かったように思います。舞台俳優さんですから、売れっ子の作家さんの作品に出演して、それも一ひねりもふたひねりもあるようなユニークな作品に出演することは俳優としてプラスなことではあるのでしょう。今後は、わたしが作品選びに気をつけるようにします。日本の演劇はくせものだわ。この前の”ハルシオンデイズ”といい、世の中でうけているからといって、わたしの気持ちを満たしてくれるとは限らないことを本日もいやというほど思い知らされました。

わたしは、シアターエンターテイメント、舞台芸術を深く愛してはいますけれど、何もかもを受け入れられるほどの器ではないのでした。