2023年1月12日

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一昨日に続いて、”容疑者Xの献身”、2回目です。今回再演にあたっては、トリプルキャストで、初演でも主演だったチョソンユンさんも出演しているはずですが、なぜだか、彼の回は配信がありません。初演の時も見損ねており、観たかったので、残念です。とはいえ、初演の時に感動したチェジェウンさんの回の配信は是非に観たかったのでした。

よかったです~。もしかして、これは、好みの問題かもしれませんが、ジェウンさんの石上って、わたしが思い描いたそのままという感じなのです。普段の生活の孤独感をにじませた表情、姿。日常の中に、なんだか悲しみをたたえています。心の表面が凍りついたように冷たいのだけれど、やすことみさとの存在がそれを溶かすかのように、彼の孤独な日常を潤しているのを、いちいちの仕草や姿に感じます。自分の気持ちを言葉にしたり表情に出すことを得意としないけれど、その頭脳はたえまなく天才的に働いていることも。彼の明晰さが、埋もれたような生活の中で、行き場を求めて葛藤しているかのような苦悩に似た痛みも感じます。やすこ親子に出会う前は、その閉塞感に押しつぶされそうになりながら暮らし、いよいよ耐え切れず絶望にとらわれていて、この親子との寸前の出会いが彼の人生を救ったのです。それゆえに、彼は、自分の人生を投げ出すことを厭わなかったのでしょう。この決断は、天才的な思考としてなのか、やすこへの愛が理性を揺らがしたのか、どちらかはわかりませんが。やすこが自首してこなければ、彼は、満たされて残りの一生を送れたのだろうか、自首してきたことにより、彼の残りの一生は、無念さで押しつぶされそうなのだろうか、終わってもなお、石上の思いを考えずにはいられません。と、いろいろ書いてますけど、この場合、すべてジェウンさんの演じた石上を想像しながら考えているのでした。

本日の湯川は、パクミンソンさんです。この方は、コロナ以降の公演のキャスティングでよく目にするのですが、実際の舞台で観たことはありません。わりと大劇場系の出演が多い方のようです。外見は、初演の方や一昨日のオジョンヒョク氏ほどのイケメンではなく、普通の韓国人でした。これって、ちょっとお話的に矛盾するところがあって、石上が湯川に、”おまえは、*いつみてもいいな。うらやましい”というセリフがあり、それをきいて、湯川はとても驚くのです。いいなというのは、外見のことをいっており、湯川が同じ年なのに、若くみえるからうらやましいみたいなセリフらしいのです。で、この二人の同級生の刑事、草彅も年相応で、湯川だけが若みえしているという設定なのです。しかしながら、本日の刑事役の方も若くみえたし、ジェウンさんとパクミンソンさんでは、ジェウンさんのほうがイケメンなのです。湯川は、こざっぱりスーツを着こなしていますけど、石上が湯川をうらやむという部分では説得力がなかったように思います。ここに書くとどうでもよいように思えますけど、映画で、福山がいかにもそのセリフに似つかわしかったことや、初演のソンウォングンやシンソンロク氏の垢抜けた感じ、オジョンヒョク氏の何気にイケメン加減があってこそ、このセリフは生きていたと思うのです。それに、このセリフで、湯川は石上がやすこを愛していることを知るわけで、物語上それなりに重要なセリフなのでした。パクミンソンさんの演技も歌もよかったけど、外見に関しては、若干残念でした。とはいえ、石上の事実を知りながら、立証できない悔しさの時、”おまえの貴重な頭脳をこんなことに使うなんて”、”そんなことを言ってくれるのは、友達だけだな”という場面は、大変によかったです。

やすこは、ダブルキャストなのに、本日も同じ女優さんでした。みさとは、シングルかと思っていたら、こちらもダブルらしく、前回と違っていましたが、その方もよかったです。韓国って、けっこう大人の女優さんがしっかり違和感なく高校生をやってしまうのがすごいです。演技もそうですが、発声が違うのか、声が10代のトーンを出せるのだろうと思われます。

作品全体は、せりふがほぼ歌でつながれていますし、数学的な説明のセリフも多いので、細かい面白さを満喫するのは難しいかとは思いますが、原作が根底にもつ、純愛と切なさは十分に味わえるのではないでしょうか。韓国ミュージカル版、よき作品でした。


1/13追記 韓国語でも、このセリフは、いいなではなく、若くていいなでした。わたしのヒアリング能力の問題。セリフのアカウントで確認しました。