2021年7月24日
オペラ劇場(東京)

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プリンセス 亀の姫  池田理沙子
浦島太郎 奥村康祐
時の案内人 中島駿野
フグ接待魚 奥田花純/渡辺与布
サメ用心棒 木下嘉人/小野寺雄
タイ女将 細田千晶
イカす3兄弟 清水裕三郎/福田紘也/山田悠貴
織姫と彦星 奥田花純/木下嘉人
竜田姫 寺田亜沙子


前回、”竜宮”を観てから、もう一年も経つのだなとちょっとびっくりです。コロナになってから、時間の感覚がおかしくなっていて、一日の時間が経つのは早いのに、月日がのろのろ動いているようで、それでいて、単調な中のイベントごととイベントごとの間は、実質の半分くらいしかないような。”竜宮”の初演のインパクトはかなり強かったので、感覚的にはまだ半年くらいしか経ってないような気します。

今回、どこをさがしても、詳細のキャスト表がないのですよ。前回のキャスト表には、細かいキャストが全部載っていたので、ああいうのを期待していたのですけど。プログラムに載せるのが大変なら、せめて当日、Webにだけでも掲載してほしいです。今回のような作品は、パートパートで見どころがまったく違いますから、どんなダンサーがどんな風に踊っているかは、観客としては興味あるのです。主演ダンサーは、いやでもわかりますから、むしろ、サイドにいながら、個性的な役割を演じる人々こそ名前が知りたいなと思うのでした。

本日は、またまたお知り合いのご厚情で、ものすご~くよいお席で観ることができました。奥村君をこの距離で観るのは、厚地君が”ジゼル”でアルブレヒトを踊った時に、ペイザントで観た時以来ではないかしら。オペラ劇場の1階前方のお席なんて、ロバートと厚地君が主演の公演くらいでしか座ったことないように思います。そういうわけで、本日は、プロジェクトマッピングは、さっぱり見えないお席ではあったのです。しかしながら、本日は、お衣装の細かいところや、キャラクターたちの個性を活かすためのお衣装づくりがどうなっているかなどを、しっかりと確認することができました。あらためて、よくできてるわ~と感心しました。タツノオトシゴって、片足が黄色いお衣装で、片足は、みえないように黒いお衣装になっています。これが、遠くからみると、黒い部分がみえないのですよね。こうなってたんだ~と知りました。タコの動きは、床をいざるって方言かな?横すわりして、床をひきづるように動いていたのですね。イカす3兄弟は、上からだと、よくみえてなかったのですけど、足の部分に吸盤もあって、タンゴの動きとイカの足の動きが見事にマッチしているのです。去年もおもしろいわと思いましたが、本日は、さらに細かい部分までみえて、さらにイカらしさが表れていました。その他のフグがバランスボールにのってるのもおもしろかったです。サメの用心棒は、相変わらずかっこいい振付です。どのお衣装も単純に一枚の布で構成されていなくて、だいたい2パーツから3パーツで、そのシルエットや動いた時の色のビジュアル感とかまで考えられているように思えました。

1幕が、キャラクターの面白さでみせるとしたら、2幕は、日本の四季をしっとりと情緒豊かにみせます。”竜宮”のすばらしさは、1幕のエンターテイメント感いっぱいの部分と、大きく趣をかえない自然な流れで、おちついた大人の芸術的流れにつなげているところです。前回は、3階から全体の雰囲気をみましたが、本日は、目の前で、細部までそのつくりを観ることができました。”天女の舞”や”どんぐり”などは、前回は、あまり印象に残りませんでしたが、本日は、バレエそのものとして楽しめました。前回も好きだった、”夏祭り”や”雪の中の結婚式”は、さらによかったです。

今回のメンバーは、ほとんど、前回観たかたと同じなのですよね。速水君が、浦島太郎に抜擢されて、ぬけちゃいましたけどね。なので、個々のキャラに関しては、特に印象はかわりません。細田さんのタイの女将も寺田さんの竜田姫もよかったです。できることなら、本島さんの竜田姫とか観たかったなと思いましたけれど。時の旅人の中島君は、前回の”竜宮”で初めてみて、いい味だしてるなと思っていたら、今年、コッペリウス博士にも抜擢されて、これから楽しみなキャラクターの方ですね。彼は、体型もすっとしていて、動きがきれいなので、コミカルなキャラをやっても清潔感があってよいと思います。バレエはお上手なのだろうけれど、個人的にちょっと好みでなかったのが、七夕のお二人でした。なんとなく、一年に一度しか会えない切なさを感じなかったので。

昨年に続いて、今年も主演は、奥村君と池田さんです。この作品は、他のどのペアよりも、この二人にぴったりかと思います。奥村君は、何をやっても嬉しいのですけど、池田さんは、なかなか役によって、向き不向きがでるのですけど、この亀姫は、彼女のまったりのんびりな雰囲気にピッタリです。浦島太郎と迎えにいって、亀の小舟をちまちま動かす姿もかわいいし、竜宮城で浦島太郎と仲良くなって、嬉しそうに袖にはけている姿もかわいいし、浦島太郎が家にもどるとわかって悲しみいっぱいで踊る姿もかわいかったです。この作品は、あまり緊張しないのか、古典でみせる表情の硬さがないのが何よりです。彼女の代表作になることでしょう。

そして、本日は、こんな近くで、こんなにたくさん、奥村君のバレエを目の前で観れて大満足でした。彼は、わりと表情豊かに演じる人なのですよね。助けた亀をなでながら、反応する表情などは、遠くからではなかなわからなかったです。あと、演技をするところではないのですけど、夏祭りとか、2幕の群舞の人々たちに混ざって踊る時の表情が、けっこう豊かで、こんな風な表情で踊っていたのだね~と知りました。いつも、ラインの美しさや、すかっとするようなジャンプやマネージュにみせられていましたけれど、こうしてお顔がはっきりみえると見える景色もかわるのだなと思いました。浦島太郎の時のほのぼのやさしく微笑みにみちた時もよいけれど、2幕になって、ダンスの内容によって、きりっとしまった表情で踊る姿も素敵でした。ドラマティックバレエでの主役がまだないので、彼の演技する姿や表情を多彩にみれたことがなかったのですけど、”竜宮”って以外にも、そういう姿を観ることができる作品なのだなと思います。この作品は、バレエの振り付けとしてもみせることができるし、奥村君のよさがいかされた作品かと思います。本日も障子の奥で踊る影絵のラインが大変に美しくツボでした。

本日は、カーテンコール後に写真撮影OKとのことでしたが、久しぶりに暗い中でスマホをかまえたら、全然ピントがあわず大失敗でした。韓国のカーテンコールでも、だいたい失敗していたのを思い出しました。なので、動画OKにしてほしいのですよね。動画なら、失敗率低いので。あのぐらいの長さなら、動画でSNSにあがっても全然問題ないような気がしますが。できることなら、カーテンコールから撮影可になるといいのにと思います。それは、さておき、”竜宮”って、ほんと世界に誇れる作品かと思います。コロナでなければ、ヨーロッパからバカンスに日本にやってきて、いろんな人にみてほしかったです。次回は、コロナのない時に上演できることを祈ります。